月光(誉田哲也)を読んで-感想-

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書名:月光
作者:誉田 哲也

独自の感想ですが、実際に本を読み感じた事、伝えたい事をまとめたものです。
どんな本を読もうかと悩んでいる人の参考になれば幸いです

交通事故で亡くなった姉の死に疑問を抱く妹。
真相に辿り着くが…。

被害者・加害者・遺族・被害者の恋人。
複数の登場人物から見た視点で物語は進んでおり、読んでいる箇所によって
見えるものや感じるものが違う。

例えるなら、円柱は上から見ると丸だが横から見た時は四角に見える。
見る方向によって全く違った形なのにそれを広い視野で見た時、円柱なのだと気付く。

この「月光」も偏った位置からでしか人を見る事が出来なかった
幾人もの歪んだ心が悲劇を起こしてしまったのではないだろうか。
一歩下がり、広い視野を持てたならあるいは回避できた悲劇だったのかもしれない。

「若気の至り」や「恋は盲目」などと自己が侵した罪を言ってのける人もいる。
加害者はそれで済まされるかもしれないが、被害者はそれでは癒されない。

結局の所、被害者はどれだけ経っても被害者であると言う事だ。
そして、遺族もまたそうである事をこの作品を読むと痛いほど感じる。

しかしながら、当時を振り返り自己を追い詰める加害者の現在が
遺族の1人である妹の幾重にもきつく結ばれた心を
解きほぐすきっかけになった事は少なからずあるだろう。

「あの時なぜ、あんな事をしてしまったのだろう」
「あの時なぜ、あんな事を言ってしまったのだろう」

誰しもが、経験した事のある後悔の念。
自身が傷付いただけならそれは自業自得であり、まだ救いようがある。
しかし、そこに第三者が加わった時、誰しもが加害者となりうる事を覚えておいて欲しい。

この作品はそんな事を考えさせられる、奥深い作品である。


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